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居住者・非居住者とは?

所得税法では、個人納税義務者を国籍ではなく、居住地主義(居住者と非居住者を区分する考え方)にもとづk、課税所得範囲を変えています。

居住者とは、国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所(きょしょ)を有する個人をいいます。

非居住者とは、居住者以外の個人をいいます。逆に言うと、国内に住所を有せず、又は現在まで引き続いて1年未満しか居所(きょしょ)を有していない個人をいいます。もちろん、国内に住所も居所も全く有しない個人は非居住者です。

(居住者の定義)
所得税法第2条3号
居住者 国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて一年以上居所を有する個人をいう。

(非居住者の定義)
所得税法第2条5号
非居住者 居住者以外の個人をいう。

 

居住者と非居住者を区分する「住所」とは

所得税法には住所に関する規定は無く、所得税法基本通達に定めがあります。

所得税法基本通達2-1では「住所とは各人の生活の本拠をいい、生活の本拠であるかどうかは客観的事実によって判定する」と定められています。

最高裁判所昭和35年3月22日判決では、「生活の本拠とは、その者の生活に最も関係の深い一般生活、全生活の中心を指すものであるところ」と判示しています。

最高裁判所昭和32年9月13日判決では、「一定の場所がその者の住所とする意思だけでは足りず、客観的に生活の本拠たる実態を必要とするものと解される」と判示しています。

 

「住所」の推定規定

国内に住所を有するものと推定する場合や、逆に国内に住所を有しない者と推定する場合があります。

(国内に住所を有する者と推定する場合)
所得税法施行令
第一四条 国内に居住することとなつた個人が次の各号のいずれかに該当する場合には、その者は、国内に住所を有する者と推定する。
一 その者が国内において、継続して一年以上居住することを通常必要とする職業を有すること。
二 その者が日本の国籍を有し、かつ、その者が国内において生計を一にする配偶者その他の親族を有することその他国内におけるその者の職業及び資産の有無等の状況に照らし、その者が国内において継続して一年以上居住するものと推測するに足りる事実があること。
2 前項の規定により国内に住所を有する者と推定される個人と生計を一にする配偶者その他その者の扶養する親族が国内に居住する場合には、これらの者も国内に住所を有する者と推定する。

(国内に住所を有しない者と推定する場合)
第一五条 国外に居住することとなつた個人が次の各号のいずれかに該当する場合には、その者は、国内に住所を有しない者と推定する。
一 その者が国外において、継続して一年以上居住することを通常必要とする職業を有すること。
二 その者が外国の国籍を有し又は外国の法令によりその外国に永住する許可を受けており、かつ、その者が国内において生計を一にする配偶者その他の親族を有しないことその他国内におけるその者の職業及び資産の有無等の状況に照らし、その者が再び国内に帰り、主として国内に居住するものと推測するに足りる事実がないこと。
2 前項の規定により国内に住所を有しない者と推定される個人と生計を一にする配偶者その他その者の扶養する親族が国外に居住する場合には、これらの者も国内に住所を有しない者と推定する。

 

居住者と非居住者を区分する居所(きょしょ)とは

所得税法と所得税法基本通達には居所に関する規定は無く、判例等から居所の解釈を見て取ることができます。

神戸地裁平成14年10月7日判決では「居所といいうるためには一時的に居住するだけでは足りず、生活の本拠という程度には至らない者の、個人が相当期間継続して居住する場所」をいうものと判示しています。

 

住所・居所の有無が争いになるケース

非居住者に当たるか否かの判断において、日本国内における「住所・居所の有無」が争われることがあります。

滞在日数のみで、「住所・居所の有無」が決まる訳ではない点、留意が必要です。

(1)住所に関しての争点

日本と外国の双方に住居や職業を有していて、双方に一定期間滞在するような場合には、住所の推定規定は当てはまらなくなります。

所有家屋での滞在が里帰り目的等の一時的なものにすぎないような場合、客観的には生活の本拠は外国の住所であったと認められます。一時的なものにすぎないかは、パスポートに押されたスタンプから入出国記録で、日本での滞在日数を客観的に証明可能です。

日本での滞在日数が短ければ、所有家屋に相当期間継続して居住していたとは認められません。

(2)居所に関しての争点

一時的に外国へ赴く場合に引き続き国内に居住を有するものとして取り扱いますが、本当に一時的なものかどうかが問題となります。例えば、出国して外国に滞在する期間中、国内に配偶者等生計を一にする親族を残し、再入国後住む予定の住居等を保有して、家財道具を他の場所に預けているような場合、外国に滞在期間も日本国内に居所を有するものとして取り扱われます(所得税法基本通達2-2)。

 

「住所」=「生活の本拠」を決定する基準

生活の本拠を決定する基準として、神戸地裁昭和60年12月2日判決は、「所得税法の解釈適用上当該個人の生活の本拠がいずれの土地にあると認めるべきかは、租税法が多数人を相手方として課税を行う関係上、便宜、客観的な表象に着目して画一的に規律せざるを得ないところからして、客観的な事実、即ち住居職業国内において生計を一にする配偶者その他の親族を有するか否か資産の所在等に基づき判定するのが相当である。」と判示しています。

また東京高裁平成20年1月23日判決は、「一定の場所が生活の本拠に当たるか否かは、住居、職業、生計を一にする配偶者その他の親族の存否、資産の所在等の客観的事実に、居住者の言動等により外部から客観的に認識することができる居住者の居住意思を総合して判断する」と判示しています。

 

生活の本拠を決定する基準としての「職業」

事業所得者や給与所得者の場合、生活の本拠を決定する基準における「職業」の重要性は高いといえます。日本国内と外国の両方で職業を持っている場合、国内と外国のどちらが良い重要性があるかを検討する必要があるでしょう。

【例1】
多国籍企業の全社経営戦略立案に従事しているような人の場合、各国の滞在期間だけで生活本拠を判定できず、その多国籍企業の活動の中心の所在場所により「生活の本拠」を判定することになると思われます。例えば、滞在期間が短い国であっても重要な職務遂行をしている場所が住所とすべきとも考えられます。

【例2】
日本企業(海外にグループの無いドメスティックな日本企業)の役員の場合、たとえ外国の滞在日数が半数を超えていたとしても、「生活の本拠」は日本にあるものと判定される可能性が高いと思います。

 

生活の本拠を決定する基準としての「生計を一にする配偶者その他の親族」

生計を一にする配偶者を外国に残して日本に滞在する場合には、「生活の本拠」が外国にある証拠となるとも考えられそうです。逆に、生計を一にする配偶者を日本に残して外国に滞在する場合には、「生活の本拠」が日本にある証拠となるとも考えられそうです。

自分の仕事のためであったり、子供の教育のためであったり、配偶者等の親族の固有の事情により居住地が選択された場合、このことだけで、生活の本拠を決定することはできません。「生活の本拠」の決定は、あくまで納税者本人についての考察が優先され、配偶者等の存否は補完的な考慮要素となります。

 

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