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納税管理人選任をお忘れなく

日本の会社に勤めるサラリーマンが、1年以上の予定で海外赴任や海外移住等する場合、一般的には「日本国内に住所を有しないものと推定」されます。

海外出発日までに給与以外の所得があるときや、海外出発後国内にある不動産所得や譲渡所得等の、日本国内で生じた国内源泉所得がある場合は、日本で確定申告が必要になるケースがあります。

確定申告が必要となる場合には、納税管理人を選任し、「所得税の納税管理人の届出書」を、出国するまでに納税者自身の納税地を管轄する所轄税務署に提出することになります。

納税管理人が納税者に代わって、確定申告書提出や税金納付の手続きを代行します。

出国後の納税手続等が心配な方、非居住者税務に詳しい税理士にご依頼ください!

 

 

納税管理人とは?

納税管理人とは、確定申告書の提出や各種税金納付等を非居住者(日本国内に住所を有しない者)に代わって行う人のことです。なお、納税管理人を定めたとき又は出国の日までに税務署に届出書を提出する必要があります(所得税法127条、130条、国税通則法117条)。

納税管理人を選任しますと、税務署から送られてくる所得税等に関する書類が納税者本人ではなく、納税管理人の住所に送られますので、手続忘れがなくなります!

納税管理人は、納税者に代わって、税務申告書の提出や各種税務関連書類の受領、国税の納付又は還付金の受領等、本来は納税者本人がやる手続を代行することになります。

納税管理人を選任しない場合には、日本を出国するまでに申告納税をしなければなりません。

 

所得税法127条
(年の中途で出国をする場合の確定申告)
居住者は、年の中途において出国をする場合において、その年一月一日からその出国の時までの間における総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額について、第百二十条第一項(確定所得申告)の規定による申告書を提出しなければならない場合に該当するときは、第三項の規定による申告書を提出する場合を除き、その出国の時までに、税務署長に対し、その時の現況により同条第一項各号に掲げる事項を記載した申告書を提出しなければならない。
2 居住者は、年の中途において出国をする場合において、その年一月一日からその出国の時までの間における総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額について、第百二十二条第一項(還付を受けるための申告)の規定による申告書を提出することができる場合に該当するときは、前項の規定による申告書を提出すべき場合及び次項の規定による申告書を提出することができる場合を除き、税務署長に対し、その時の現況により第百二十条第一項各号に掲げる事項を記載した申告書を提出することができる。
3 居住者は、年の中途において出国をする場合において、その年一月一日からその出国の時までの間における純損失の金額若しくは雑損失の金額又はその年の前年以前三年内の各年において生じたこれらの金額について、第百二十三条第一項(確定損失申告)の確定による申告書を提出することができる場合に該当するときは、その出国の時までに、税務署長に対し、その時の現況により同条第二項各号に掲げる事項を記載した申告書を提出することができる。
4 第百二十条第三項から第五項までの規定は、第三項の規定による申告書の提出について準用する。

所得税法130条
(出国の場合の確定申告による納付)
第百二十六条第一項(確定申告書を提出すべき者が出国をする場合の確定申告)又は第百二十七条第一項(年の中途で出国をする場合の確定申告)の規定に該当してこれらの規定に規定する申告書を提出した居住者は、これらの申告書に記載した第百二十条第一項第三号(確定所得申告に係る所得税額)に掲げる金額があるときは、これらの申告書の提出期限までに、当該金額に相当する所得税を国に納付しなければならない。

国税通則法117条
(納税管理人)
個人である納税者がこの法律の施行地に住所及び居所(事務所及び事業所を除く。)を有せず、若しくは有しないこととなる場合又はこの法律の施行地に本店若しくは主たる事務所を有しない法人である納税者がこの法律の施行地にその事務所及び事業所を有せず、若しくは有しないこととなる場合において、納税申告書の提出その他国税に関する事項を処理する必要があるときは、その者は、当該事項を処理させるため、この法律の施行地に住所又は居所を有する者で当該事項の処理につき便宜を有するもののうちから納税管理人を定めなければならない。
2  納税者は、前項の規定により納税管理人を定めたときは、当該納税管理人に係る国税の納税地を所轄する税務署長(保税地域からの引取りに係る消費税等に関する事項のみを処理させるため、納税管理人を定めたときは、当該消費税等の納税地を所轄する税関長)にその旨を届け出なければならない。その納税管理人を解任したときも、また同様とする。

 

納税管理人の資格

納税管理人につき、国税通則法117条は「この法律の施行地に住所又は居所を有する者で当該事項の処理につき便宜を有するもの」と規定するだけで、日本にいる人間であれば誰でもなれますし、有償でも無償でも構いません。

しかしながら、確定申告書提出や納税等、税金に関する事項を処理する必要があるため、実務上は税理士に依頼するのが一般的です。

 

納税管理人選任の必要な場合

日本国内の会社に勤めている給与所得者が1年以上の予定で海外の支店などに転勤すると非居住者に該当します。

その場合、

  • 海外に出発する日までに既に一定の所得があるとき
  • 海外に出発した後国内にある不動産の貸付けによる所得や国内にある資産の譲渡による所得などの、日本国内で生じた所得があるとき

日本国内で確定申告が必要になるので、納税管理人届出書を提出する必要がでてきます。

 

納税管理人届出書

納税管理人を選任する場合に提出する「所得税・消費税の納税管理人の届出書」です。

納税管理人の届出書には、「納税地」、「国外における住所または居所」、「納税管理人の氏名及び住所又は居所」、「納税管理人を定めた理由」を記載します。

「納税管理人を定めたとき又は出国の日まで」に「納税者の納税地の所轄税務署長」に提出します。

所得税・消費税の納税管理人の届出書

出典:所得税・消費税の納税管理人の届出手続 国税庁ホームページhttps://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/07.htm

 

納税管理人届出書の提出期限

納税管理人を決めましたら、税務署に納税管理人届出書を提出する訳ですが、国外転出時課税について納税猶予の特例を受ける場合は、国外転出時までに納税管理人届出書を提出する必要があります。

 

納税管理人届出書を提出した場合の確定申告提出期限

海外出国の時までに税務署に納税管理人届出書を提出した場合は、(1)「その年1月1日から出国する日までの間に生じた全ての所得」と(2)「出国した日の翌日からその年12月31日までの間に生じた国内源泉所得(源泉分離課税除く)」の合計額について、翌年2月16日から3月15日までの間に納税管理人を通して確定申告をする必要があります。

 

納税管理人届出書を提出しなかった場合の確定申告提出期限

1.出国前に生じた所得のみに係る確定申告
海外に出発する日までに勤務先からの給与以外の一定の所得がある場合、その年1月1日から出国する日までの間に生じた所得について、その出国の時までに確定申告(準確定申告)をする必要があります(なお、1月1日から3月15日までの間に出国する場合、前年分の所得に係る確定申告書についても、出国の時までに提出する必要があります。)。

また、海外に出発する日まで勤務先の給与のみの場合は、勤務先において年末調整が行われるので確定申告(準確定申告)は不要です。

2.出国前に生じた所得と出国後に生じた国内源泉所得に係る確定申告
上記の準確定申告したとしても、その年1月1日から出国する日までの間に生じた全ての所得及び出国した日の翌日からその年12月31日までの間に生じた国内源泉所得(源泉分離課税除く)について、翌年の2月16日から3月15日までの間に確定申告をする必要があり、二度手間です。

この場合の納付すべき税額は、当該申告書において計算された納付すべき税額から準確定申告で記載された納付すべき税額を控除した残額となります(逆に、当該申告書に記載された納付すべき税額が準確定申告に記載された納付すべき税額より少額の場合には、その差額が還付となります)。

 

納税管理人 税理士報酬料金

Gemstone税理士法人では、月額5,000円(消費税別)にて税理士が納税管理人をお引き受けいたします。

これ以外に納税管理人に関する追加費用は一切かかりません(他社より高い場合はお申し付けください)。

※なお、確定申告報酬は別途発生致します。

Gemstone税理士法人では、Big4国際税務部門で経験を積んだ税理士等が、非居住者(日本国内に住所を有しない者)の方の納税申告書の提出その他国税に関する事項等のお手伝いをします。

確定申告報酬は、不動産収入の多寡にかかわらず一律、1件、50,000円(消費税別)です。

お問い合わせはこちら! 港区税理士

 

納税管理人に関する、よくあるご質問

【質問】

海外転勤になり自宅を賃貸に出すことになりました。
不動産所得を申告するために納税管理人をお願いしようと思っています。
この場合、納税地はどこになりますか?

【回答】

納税管理人を選任しても、納税管理人の住所を納税地とすることはできません。
日本にある自宅住所が納税地になります。

 

【質問】

相続人が海外に住んでいる場合、どうやって相続税の申告納税を行うのでしょうか?

【回答】

国税通則法に基づき、相続税申告書の提出その他の税理に関する事項を処理してもらうために、納税管理人を選任することになります。

 

【質問】

国外転出時課税についての税金について納税猶予を受けることができると聞きましたがどのような手続でしょうか?

【回答】

出国時に「納税管理人」(通常は税理士)を届け出て税務署に担保を提供することで、税金について、5年の納税猶予を受けることができます。さらに申請することで、10年まで納税猶予を延長できます。

 

【質問】

納税管理人を2人以上選任することはできますか?

【回答】

納税管理人は1人しか選任することができません。

 

【質問】

出国後住民税の残額を最後の給与から一括徴収しないで普通徴収に切り替えた場合の残りの住民税の支払い方を教えてください。

【回答】

出国により、納税通知書の受け取りや住民税の納税が困難な場合は、あらかじめ納税管理人を選定し、「納税管理人申告書」を住所地の市区町村に提出してください。また住民税の支払いは口座振替も可能です。

 

【質問】

納税管理人は家族等に頼むべきでしょうか?税理士に頼むべきでしょうか?

【回答】

家族が日本に残る場合、家族・友人等に無償で頼んでも差し支えありませんが、所得税確定申告等が必要な場合、納税管理人費用がかかったとしても、税理士に依頼するのが望ましいと思います。知人等が報酬をもらって納税管理人になる場合は、税理士法に抵触します。

 

【質問】

非居住者が納税管理人を選任する場合の、納税管理人届出書における「納税地の記載方法」を教えてください。

【回答】

ここでいう納税地とは、納税管理人を選任することになった国税についての納税義務者本人の納税地であり、納税管理人の納税地ではありません。
非居住者等の納税地は以下の順で決まります。
1 国内に住所を有する場合 その住所地
2 国内に住所を有せず、居所を有する場合 その居所地
3 国内に恒久的施設を有する非居住者に該当する場合 事務所等の所在地
4 納税地を有していた者が国内に住所及び居所を有しないこととなつた場所にその者の親族等が引き続き、又はその者に代わつて居住しているとき。 その納税地とされていた場所
5 不動産の貸付け等の対価を受ける場合 不動産の所在地
6 これ以外の場合 直前納税地(直前納税地が無い場合は、麹町税務署)

 

(納税地)
第十五条  所得税の納税地は、納税義務者が次の各号に掲げる場合のいずれに該当するかに応じ当該各号に定める場所とする。
一  国内に住所を有する場合 その住所地
二  国内に住所を有せず、居所を有する場合 その居所地
三  前二号に掲げる場合を除き、恒久的施設を有する非居住者である場合 その恒久的施設を通じて行う事業に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地(これらが二以上ある場合には、主たるものの所在地)
四  第一号又は第二号の規定により納税地を定められていた者が国内に住所及び居所を有しないこととなつた場合において、その者がその有しないこととなつた時に前号に規定する事業に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものを有せず、かつ、その納税地とされていた場所にその者の親族その他その者と特殊の関係を有する者として政令で定める者が引き続き、又はその者に代わつて居住しているとき。 その納税地とされていた場所
五  前各号に掲げる場合を除き、第百六十一条第一項第七号(国内源泉所得)に掲げる対価(船舶又は航空機の貸付けによるものを除く。)を受ける場合 当該対価に係る資産の所在地(その資産が二以上ある場合には、主たる資産の所在地)
六  前各号に掲げる場合以外の場合 政令で定める場所

所得税法施行令54条
(特殊な場合の納税地)
第五十四条  法第十五条第六号 (納税地)に規定する政令で定める場所は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に掲げる場所とする。
一  法第十五条第一号 から第五号 までの規定により納税地を定められていた者がこれらの規定のいずれにも該当しないこととなつた場合(同条第二号 の規定により納税地を定められていた者については、同号 の居所が短期間の滞在地であつた場合を除く。) その該当しないこととなつた時の直前において納税地であつた場所
二  前号に掲げる場合を除き、その者が国に対し所得税に関する法律の規定に基づく申告、請求その他の行為をする場合 その者が選択した場所(これらの行為が二以上ある場合には、最初にその行為をした際選択した場所)
三  前二号に掲げる場合以外の場合 麹町税務署の管轄区域内の場所

 

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