AI関連の開発について、研究開発税制の適用可能性を初期的に検討するために作成してみました。

一般型の研究開発税制および中小企業技術基盤強化税制のいずれについても、研究開発の対象性、対象費用、工数管理、証憑資料を確認するために共通して利用できます。

なお、一般型と中小企業技術基盤強化税制のどちらを適用するかは、資本金、株主構成、大規模法人による保有関係、適用除外事業者への該当性、法人税額等を踏まえて、当法人側で別途確認します。

重要度の考え方(私見です)

重要度 意味
A:必須に近い ここが弱いと、研究開発税制の適用自体がかなり難しくなる項目です。
B:重要 ここが弱いと、対象費用の一部除外、追加資料依頼、慎重判断になりやすい項目です。
C:補強 あると説明力が高まる項目です。ない場合でも、他の資料で補完できる可能性があります。

本チェックリストは、国税庁作成のものではありませんし、〇の数で機械的に判定するものではありません。判断の目安として作成していました。

ただし、A項目が複数弱い場合は、研究開発税制の適用はかなり慎重に判断する必要があります。
B項目が弱い場合は、対象費用を絞る、証憑を追加する、按分するなどの対応が必要になる可能性があります。
C項目は、税務調査時の説明力を高めるための補強資料です。

1. 研究開発テーマ

重要度 質問 回答 何がダメだと危ないか
A 研究開発税制の対象として検討したい開発テーマを教えてください。 開発テーマを特定できない場合、会社全体の開発費を漠然と対象にすることになり、試験研究費としての対象性を説明できません。
B その開発は、外部顧客に有償提供するサービス・プロダクトに関するものですか。 はい / いいえ / 未定 「いいえ」の場合、新サービス研究としては弱くなります。ただし、技術の改良・考案・発明に係る試験研究として検討できる場合があります。
A その開発で、技術的に難しかった点・不確実だった点を教えてください。 技術的課題や不確実性を説明できない場合、通常の開発・実装作業との違いが出ず、試験研究としての説明が弱くなります。
A 通常の機能追加・保守・バグ修正ではなく、試行錯誤や検証を行った部分を教えてください。 試行錯誤や検証が説明できない場合、研究開発ではなく通常開発・保守・改修と見られるリスクが高まります。
B 開発により改善した指標があれば教えてください。例:精度、速度、コスト、再現率、処理時間等 改善指標がない場合でも即アウトではありませんが、AI開発で何を検証し、何が改善したのかを説明しづらくなります。

2. AI・データ分析の内容

重要度 質問 回答 何がダメだと危ないか
B 利用しているデータの種類を教えてください。例:画像、テキスト、音声、ログ、取引データ、PDF等 データの種類や利用目的が不明な場合、AI開発の実態や研究開発との関係を説明しにくくなります。
A データの収集・前処理・分析・モデル開発を行っていますか。内容を簡単に教えてください。 ここがない場合、単なる既存AI/API利用や通常のシステム実装に近くなり、AI開発としての研究開発性が弱くなります。
B 既存AI APIや外部モデルを利用している場合、自社で追加学習・評価・改善を行っていますか。 既存AIを呼び出しているだけの場合、自社の試験研究活動として説明するのが難しくなります。
B モデル比較、精度検証、パラメータ調整、RAG改善、プロンプト改善等を行っていますか。 検証・改善の記録がない場合、研究開発ではなく単なる導入・利用と見られるリスクが高まります。
B 分析・モデル開発を担当したメンバーの職種を教えてください。例:機械学習エンジニア、AIエンジニア、データサイエンティスト等 新サービス研究として整理する場合、情報解析専門家による分析の説明が必要になります。担当者の専門性が不明だと説明力が弱くなります。

3. 対象にしたい費用

重要度 質問 回答 何がダメだと危ないか
A 対象にしたい費用の種類を教えてください。 人件費 / 外注費 / クラウド費用 / GPU費用 / データ費用 / ソフトウェア費用 / その他 対象費用の種類を特定できない場合、税額控除額を計算できません。
A 研究開発に関与したメンバーを特定できますか。 はい / いいえ / 一部可能 人件費を対象にする場合、誰の給与を対象にするのか説明できず、人件費を入れることが難しくなります。
A 研究開発に係る工数を把握できますか。 はい / いいえ / 一部可能 人件費を対象にする場合、工数が把握できないと、通常業務との区分ができず、人件費の対象化はかなり危険です。
A 外注費がある場合、契約書・請求書・成果物で作業内容を確認できますか。 はい / いいえ / 一部可能 / 該当なし 外注費を対象にする場合、委託内容が分からないと、研究開発費なのか通常開発・保守費なのか判断できません。
A クラウド費用・GPU費用がある場合、研究開発用と本番環境・運用環境を区分できますか。 はい / いいえ / 一部可能 / 該当なし 区分できない場合、本番運用費や顧客提供環境費用が混入するため、クラウド費用・GPU費用を対象にするのは危険です。
B データ購入費・アノテーション費用等がある場合、利用目的を説明できますか。 はい / いいえ / 一部可能 / 該当なし 研究開発との対応関係を説明できない場合、データ費用を対象にすることは慎重判断になります。

4. 対象外になりやすい作業の有無

重要度 質問 回答 何がダメだと危ないか
A 既存サービスの保守・運用は含まれますか。 はい / いいえ / 一部含む 保守・運用が混在して区分できない場合、対象外費用が混入するリスクが高くなります。
A バグ修正は含まれますか。 はい / いいえ / 一部含む 通常のバグ修正を含めると、試験研究費ではなく通常開発費と判断されるリスクがあります。
B 通常の画面開発・軽微な機能追加は含まれますか。 はい / いいえ / 一部含む 通常開発と研究開発の区分が曖昧になると、対象費用を広く取りすぎていると見られやすくなります。
B 顧客別カスタマイズは含まれますか。 はい / いいえ / 一部含む 個別顧客対応は汎用的な研究開発ではなく、対象外と判断されやすいため区分が必要です。
B 導入支援・CS対応は含まれますか。 はい / いいえ / 一部含む 導入支援・CS対応は研究開発ではないため、含まれる場合は除外が必要です。
B 営業資料作成・デモ環境構築は含まれますか。 はい / いいえ / 一部含む 営業活動に係る費用は試験研究費ではないため、含めると否認リスクがあります。
B 社内業務効率化のみを目的とした開発は含まれますか。 はい / いいえ / 一部含む 新サービス研究としては弱くなります。ただし、技術改良型として検討できる余地があるか別途確認します。

5. 保存資料の有無

重要度 質問 回答 何がダメだと危ないか
B 研究開発計画書、開発ロードマップ、技術仕様書のいずれかはありますか。 あり / なし / 作成予定 ない場合でも即アウトではありませんが、研究開発の目的・技術課題・対象期間の説明が弱くなります。
B GitHub / GitLab / Jira / Backlog等の開発記録はありますか。 あり / なし / 一部あり 開発実態や作業内容の裏付けが弱くなります。工数表との整合確認もしづらくなります。
B 実験ログ、モデル評価レポート、精度改善履歴のいずれかはありますか。 あり / なし / 一部あり 試行錯誤・検証・改善の実態を説明しづらくなります。AI開発では特に重要です。
A 工数表または作業時間を確認できる資料はありますか。 あり / なし / 一部あり 人件費を対象にする場合、工数資料がないと人件費の対象化はかなり危険です。
A クラウド利用明細、外注請求書、データ購入請求書等はありますか。 あり / なし / 一部あり 費用の金額と内容を証憑で確認できない場合、その費用を対象にすることは困難です。

6. 共同研究・委託研究の有無

重要度 質問 回答 何がダメだと危ないか
B 大学、研究機関、外部企業等との共同研究・委託研究はありますか。 はい / いいえ 「いいえ」でも問題ありません。「はい」の場合は、オープンイノベーション型の追加検討が必要です。
B 「はい」の場合、相手先名と研究内容を簡単に教えてください。 相手先属性や研究内容が不明だと、オープンイノベーション型の適用可否を判断できません。
A 契約書・研究報告書・成果報告書はありますか。 はい / いいえ / 一部あり 共同研究・委託研究を対象にする場合、契約書や成果報告書がないと適用はかなり慎重になります。