海外不動産投資をされる方のための税金・確定申告について解説したいと思います。

Gemstone税理士法人でも、ハワイ、アメリカ本土、イギリス等の海外不動産投資をしているお客様から確定申告の相談を受けます。

海外不動産投資に詳しい税理士が確定申告代行

Contents

海外不動産の所得は税金がかかる?

日本に住んでいる人(居住者といいます)は国内と国外で生じるすべての所得に対して課税されるのです。

海外不動産の賃料収入も含めて、全世界から得られる所得、すなわち、「全世界所得」に課税されるのです。

日本の居住者で、海外不動産に投資されている方は、すでに海外で納税していたとしても、日本でも確定申告する必要があります(海外納税分も含めて)。

海外投資不動産の不動産所得、不動産の売却益などの国外所得も毎年の所得に含めて計算することになります。

国税庁タックスアンサー、No.2010 納税義務者となる個人「所得が生じた場所が日本国の内外を問わず、その全ての所得に対して課税されます。」https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/2010.htm

海外不動産投資は、海外と日本で税務申告が必要!

日本国内に住んでいる人(居住者)は、海外不動産投資で獲得た所得について、現地で課税されますが、さらに日本でも課税されることになります。海外でも日本でも税務申告が必要になるのです。

海外で得た不動産所得も損益通算できる!

海外の不動産から賃貸収入を得るときは、不動産所得の必要経費が大きくなり、不動産所得が赤字になることがあります。

必要経費には海外渡航費用や滞在費用も含めることができます。

海外不動産所得といえども、給与所得と損益の通算ができます(会社経営者や高給取りのサラリーマンには税務上のメリットが大きいです)。不動産を譲渡した時の所得(譲渡所得)は分離課税で、他の所得と合算しないで、その所得だけに税率をかけて税額計算を行います。

日本の税法における新築建物の耐用年数

日本の税法では耐用年数省令に基づいて、「法定耐用年数」が定められています。

新築建物の法定耐用年数は以下のとおりとなります。

住宅
鉄筋コンクリート造 47年
レンガ造又はブロック造 38年
重量鉄骨造(4mm超) 34年
軽量鉄骨造(3mm超4mm以下) 27年
木造又は合成樹脂造 22年

日本の税法における中古建物の耐用年数

中古建物の減価償却費を計算する際には、法定耐用年数ではなく、使用可能期間として見積もられる年数を使います。

使用可能期間の見積りが困難な場合には、簡便法によるのですが、実務上は簡便法による耐用年数を用います。

簡便法による計算式は以下のとおりです。

【法定耐用年数の全部が経過した場合】
簡便法によると、法定耐用年数×20%が耐用年数となります。
※但し、1年未満端数は切り捨てます。

【法定耐用年数の一部を経過した場合】
法定耐用年数ー経過年数+経過年数の100分の20

国税庁タックスアンサー「No.5404 中古資産の耐用年数」https://www.nta.go.jp/taxanswer/hojin/5404.htm

この短い耐用年数による、中古建物の減価償却を「加速度償却」といいます。

住宅
鉄筋コンクリート造 9年
レンガ造:ブロック造 7年
重量鉄骨造(4mm超) 6年
軽量鉄骨造(3mm超4mm以下) 5年
木造 4年

中古の木造建物の減価償却の耐用年数は、なんと4年なのです!
節税的観点では、金持ちは木造を好むということになります。

アメリカの税法における建物の耐用年数

アメリカでは建物の減価償却費は新築でも中古でも耐用年数は27.5年(居住用賃貸住宅)または39年(非居住用不動産)となります。

国外にある建物についても国内にある建物と同じ耐用年数を適用可能

税金計算において減価償却費は、海外の建物についても、日本の税法に基づく耐用年数を適用することができます。

海外の長持ちする建物に、日本の短い耐用年数を適用して短期間で減価償却費を計上し、節税を図ることが可能となるのです。

欧米の住宅の建物部分の資産価値はほとんど下がらない

アメリカやイギリスの住宅は日本とは異なり、築年数が古くなっても建物部分の資産価値がほとんど下がりません。

中古不動産物件でもほとんど値下がりしないのです!

物件価格に占める建物比率が高いので減価償却費による節税効果を期待できるのです。

海外不動産投資 税理士

国土交通省の資料によりますと、取り壊される住宅の平均築後経過年数は、イギリスの約77年、アメリカの約55年に対し、日本は30年と非常に短いのです。日本の住宅の寿命は30年なのです。

「我が国では、取り壊される住宅の平均築後経過年数は約30年と、イギリスの約77年、アメリカの約55年に比べると短い。
また、我が国の住宅流通市場全体に占める既 存住宅の流通シェアは13.1%と、イギリス88.8%、アメリカ77.6%、フランス66.4%に比べると格段に低い。」
「長期にわたり使用可能な質の高い住宅を整備・普及させていくための方策について」~社会資本整備審議会(住宅宅地分科会)答申~、国土交通省、http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha08/07/070225_.html

海外不動産投資と外国税額控除

海外不動産投資の結果、日本と海外ともに黒字の場合、日本でも海外でも同じ不動産投資に2回も税金がかかります。

日米両国で二重課税になってしまう場合があります。
(赤字の場合は、課税されないので二重課税になりません。)

この二重課税を回避するために「外国税額控除」(がいこくぜいがくこうじょ)という仕組みが設けられています。

「外国税額控除」という仕組みを活用すると、海外で納めた税金を日本で控除することができます。

外国税額控除を受けるには、海外の申告書の写しと納税証明書や源泉徴収票等が必要となります。

外国税額控除を受けるタイミングですが、外国所得税を納付することとなる日の属する年分の所得税及び復興特別所得税の額から控除します。

ただし継続してその納付することが確定した外国所得税額を実際に納付した日の属する年分において控除している場合には、この方法も認められています。

外国所得税を納付することとなる日とは具体的には、申告納税方式による場合には納税申告書を提出した日、源泉徴収方式による場合には、源泉徴収対象となった不動産賃貸料の支払の日となります。

外国所得税を必要経費算入することもできる!

外国所得税の額については、「必要経費に算入するか」または「外国税額控除をするか」という選択は、各年ごとに、その年中に確定した外国所得税の額の全部について行わなければならないものとされます。

アメリカでは黒字(納税が発生)、日本では赤字(納税が発生しない)の場合、同じ不動産物件に日米で二重課税されませんので、外国税額控除の適用は関係なくなります(中古建物の耐用年数の関係で、アメリカでは減価償却費が大きく、日本では減価償却費が小さくなるので、アメリカで黒字、日本で赤字になりやすいです。)。

その場合は、アメリカで納めた所得税は(外国税額控除ではなく)、日本での確定申告において必要経費として処理することになるのです。

所得税法基本通達46-1「必要経費算入と税額控除との選択方法」

海外不動産投資の損益取込方法について

海外不動産投資に関する、外貨建て決算書を円換算して、日本の損益と合算します。

海外での納税額は、日本の確定申告書から控除します。

国外財産調書制度

国外財産調書の提出制度は、近年、国外財産の保有が増加傾向にある中で、国外財産に係る課税の適正化が喫緊の課題となっていることなどを背景として、国外財産を保有する方からその保有する国外財産について申告させる仕組みとして、2012年度の税
制改正により導入されています。

具体的には、その年の 12 月 31 日においてその価額の合計額が 5,000万円を超える国外財産を保有する居住者の方(非永住者の方を除きます。)は、その年の翌年の3月 15 日までに当該国外財産の種類、数量及び価額その他必要な事項を記載した「国外財産調書」を、所轄税務署長に提出しなければならないこととされています。

国外財産調書を提出しなかった場合に何かペナルティはあるのかというご質問を受けることがありますが、どうでしょうか?

「国外財産調書の提出制度においては、次の行為をした場合には、1年以下の懲役又は 50 万円以下の罰金に処することとされています(国外送金等調書法 10①、②本文)。
偽りの記載をして国外財産調書を提出した場合
正当な理由がなく提出期限内に国外財産調書を提出しなかった場合
(注) 上記のほか、以下の行為が認められた場合にも、同様の罰則が課されます(国外送金等調書法9三、四)。
・ 国外財産調書の提出に関する調査について行われる当該職員の質問に対して答弁せず、若しくは偽りの答弁をし、又は検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したとき。
・ 国外財産調書の提出に関する調査について行う物件の提示又は提出の要求に対し、正当な理由がなくこれに応じず、又は偽りの記載若しくは記録をした帳簿書類その他の物件(その写しを含みます。)を提示し、若しくは提出したとき。」

「国外財産調書の提出制度(FAQ)」平成28年11月、国税庁

会計検査院が国外の中古不動産を活用した節税策に“待った”

会計検査院が、海外不動産を使って節税する富裕層の増加を指摘し、国外にある中古建物の減価償却方法の見直し検討を財務省に求めたのです。

「国外に所在する中古等建物については、83.2%が賃貸料収入を上回る状況となっていて、これらの中には賃貸料収入の10倍を超える状況となっている中古建物等が延べ23件あるなど、賃貸料収入を大きく上回る減価償却費が計上されている中古等建物もあった。」

会計検査院「国外に所在する中古の建物に係る所得税法上の減価償却費について」2016117

出典:会計検査院「検査報告とは?」http://www.jbaudit.go.jp/general/task/audit_result.html

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