スタートアップ、特にSaaSなどのサブスクリプション型ビジネスにおいて、「売上高」だけを見て一喜一憂していませんか?
もしそうなら、ビジネスの危険信号を見落としているかもしれません。
一般的な売り切り型のビジネスとは異なり、サブスク型ビジネスには特有の数字の捉え方が存在します。その中心にあるのが「MRR(月次経常収益)」です。
今回は、スタートアップの共通言語であるMRRの基本と、それを構成する「4つの変動要素」について分かりやすく解説します。
1. MRR(月次経常収益)とは何か?
MRRとは「Monthly Recurring Revenue」の略で、日本語では「月次経常収益」と呼びます。
簡単に言うと、「毎月決まって、安定的に入ってくることが予測できる売上」のことです。サブスクリプションビジネスの規模や成長スピードを測る上で、最も重要な指標とされています。
集計の鉄則:入れていい数字、ダメな数字
MRRを計算する上で、最も重要なルールは「再現性のない単発の売上をすべて排除する」ことです。
- カウントしていい数字(MRRに含む)
- 月額のシステム利用料
- 年払い契約を月換算した金額
- 追加アカウント(ID)の月額費用
- 除外しなければならない数字(MRRに含まない)
- 初期導入費用(セットアップ費)
- 単発のコンサルティング費や研修費
- 受託開発費(カスタマイズ費用)
- 消費税
例えば、ある月の総売上が150万円だったとしても、そのうち100万円が「初期設定費用(単発)」であれば、その月のMRRは「50万円」となります。
2. なぜ売上総額ではなく、MRRを分解すべきなのか?
「今月は前月比で売上が100万円増えたから順調だ」
本当にそうでしょうか?
サブスクリプションビジネスを評価する際、「結果の数字」だけを見るのは非常に危険です。
サブスクリプションビジネスを評価する際、「結果の数字」だけを見るのは非常に危険です。
ビジネスの健康状態を正しく知るために、私たちは「穴の空いたバケツ」を想像する必要があります。
- 健康状態が「悪い」ケース
- 新規顧客をたくさん獲得して200万円増えたが、既存顧客の解約によって100万円失っていた。
- ※バケツの穴が大きく、水を勢いよく注ぐことで無理やり満たしている状態です。
- 健康状態が「良い」ケース
- 新規獲得は50万円だけだが、既存顧客がプランをアップグレードして100万円増え、解約は0円だった。
- ※バケツに穴がなく、中身が自然と膨らんでいる理想的な状態です。
どちらも「差し引きプラスの成長」に見えますが、企業の未来は全く異なります。これを見極めるために、MRRを「4つの要素」に分解して集計する必要があるのです。
3. MRRを構成する「4つの変動要素」
MRRの増減(今月のMRR - 前月のMRR)は、必ず以下の4つの要素に分類されます。
① 新規獲得(New MRR)
今月、新しく有料契約を結んだ顧客から得られたMRRです。
- 例: 今月、月額1万円のプランに新しく3社が加入した = +3万円
② 拡張(Expansion MRR)
すでに契約している既存顧客が、上位プランへ移行(アップセル)したり、アカウント数を追加(クロスセル)したりして増えたMRRです。
- 例: 月額3万円のプランだった顧客が、今月から5万円のプランに上げた = +2万円
③ 更新/再開(Reactivation MRR)
過去に一度解約してしまった顧客が、今月になって再び契約を再開してくれたMRRです。
- 例: 半年前に解約した顧客が、新機能の追加を機に月額2万円で戻ってきた = +2万円
④ 解約(Churn MRR)
今月、サービスを退会してしまった顧客、あるいはプランをダウングレードして失ったMRRです。
- 例: 月額5万円の顧客が今月で解約した = -5万円
まとめ:数字の裏にある「理由」を語ろう
MRRをこの4つに分解すると、会社の課題が浮き彫りになります。
「今月はNew MRR(新規)が目標未達だが、Expansion MRR(拡張)が伸びている。つまり、マーケティングの集客に課題はあるが、既存顧客へのカスタマーサクセスは成功している」
