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1. 「貸倒損失」と「売上取消」の根本的な違い
まず、この二つの処理は税法上の意味合いが全く異なります。
- 貸倒損失: 債権(売掛金)は法的に存在しているものの、取引先の倒産や支払能力の著しい悪化といった理由により、事実上回収が不可能になった場合の損失処理です。
- 売上取消: 契約の合意解除、返品、契約の無効などにより、売上(債権)そのものが当初から無かった、あるいは消滅した場合の会計処理です。
2. 税務上の処理とタイミング
売上取消として処理する場合
- 法人税の取扱い:
- 処理時期: 契約の解除が法的に成立した日、または当事者間で解約の合意がなされた日の属する事業年度において、売上高を減額(損金算入)します。
- ポイント: たとえ過去の事業年度に計上した売上であっても、解約の合意が「当期」に行われたのであれば、当期の損金として処理します。過去の申告を修正(更正の請求)する必要はありません。
- 消費税の取扱い:
- 処理内容: 「売上げに係る対価の返還等」に該当します。
- 処理時期: 原則として、売上取消を行った(合意した)日の属する課税期間において、売上時に預かった消費税額を控除します。
- インボイス制度: 売手は買手に対し、原則として「適格返還請求書(返還インボイス)」を交付する義務があります。
貸倒損失として処理する場合
- 法人税の取扱い:
- 処理時期: 法人税法上の「貸倒損失」として損金算入が認められることが必要です。
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- 法律上の貸倒れ: 会社更生法など法的手続きによる債権カット。
- 事実上の貸倒れ: 債務者の資産状況や支払能力から、全額が回収できないことが明らかになった場合
- 形式上の貸倒れ: 継続的な取引先との取引停止後、1年以上経過した場合など。
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- 処理時期: 法人税法上の「貸倒損失」として損金算入が認められることが必要です。
- 消費税の取扱い:
- 処理内容: 貸倒れが確定した日の属する課税期間において控除します。
